#01 「着磁」ってナニ?  着磁に必要なモノとは

マグネットというと「鉄にくっつく」というイメージが浮かびますが、実は、最初から鉄にくっつくわけではありません。磁石材料を成形した段階では、磁石はまだ磁気を帯びておらず、この、磁気を帯びていない磁石に、磁気を付ける作業を「着磁」といいます。

着磁をすることによって、はじめて磁石が磁気を帯び、鉄にくっつくようになります。

子供の頃、学校などで
「U字型磁石を釘にこすりつけると、釘が磁気を帯びて磁石のようになってしまう」

というような経験はありませんか?これがまさに「着磁」です。

磁気をつける(着磁する)ためには、磁界の中に放置してあげれば良いのです。マグネットを着磁するためには、釘の場合よりはるかに強い磁界の中に放置させる必要があります。強い磁気を帯びたマグネットを作るには、より強い磁界が必要です。
しかし、強い磁界をかければかけるほど、強いマグネットができるかというと、そうではありません。マグネットの材質によって磁気を帯びるにも限界点があります。
いくら強い磁界をかけても「これ以上は(出来上がるマグネットの)強さが変わらない」、この限界点を「飽和点」と言い、飽和点まで着磁することを「飽和着磁」といいます。

マグネット材料のもつ性能を最大限引き出すためには、飽和着磁が必要です。
では、実際に産業界ではどうやって着磁しているのでしょうか。

着磁に必要なモノ その① 「空芯コイル」「着磁ヨーク」

空芯コイル

まず、電線をグルグル巻いてコイルを作ります。その中にマグネットを置いて、コイルに電流を流すとコイルの中に磁界が発生し、マグネットが着磁されます。

磁界の方向は、コイルに流れる電流の向きによって決まり、磁界の強さは、コイルに流れる電流の強さによって決まります。
このコイルを「空芯コイル」と言い、着磁に使う空芯コイルを特に「着磁コイル」と呼ぶこともあります。

この空芯コイルは、N/S、2極の単純な着磁しかできないと言う欠点がありますが、全ての着磁の基本となる方法で、現在でも数多く使用されています。



着磁ヨーク

より複雑な多極着磁を行う場合には、「着磁ヨーク」という専用の治具が必要になります。

磁界発生の原理は空芯コイルと同じですが、着磁ヨークは機械加工等で加工した鉄心に電線を巻いて作ります。鉄芯の形状や巻線方法を変えることによって、発生する磁界を制御し、複雑な着磁を可能にします。


例えば、平らな鉄の板に縞状に溝を彫り、その溝に電線を埋め込みます。その上に、シート状のマグネットを置いて電線に電流を流すとマグネットは縞状に着磁されます。

これは実際に、車の初心者マーク等に使われている着磁方法です。

着磁ヨークは、
マグネットに合わせて一品一品設計する必要があり、オーダーメイド製作が基本となります。

さて、空芯コイル・着磁ヨークの原理はおわかり頂けましたでしょうか?

着磁に必要なモノ その② 「着磁電源」

先にお話した通り、強い磁界を発生させるには強い電流を必要とします。具体的には1000A~30000A以上という、ちょっと想像のつかない値です。
この巨大電流を発生させる装置を「着磁電源」と言います。

現在、主流となっている着磁電源は、コンデンサーを利用したタイプで「コンデンサー式着磁電源」とも呼ばれています。
コンデンサーにエネルギーを充電し、それを一気に放電するという仕組みで、非常に短い時間ですが大きな電流を発生させることができます。

まとめ

現代の着磁は上述した通り、電線に電流を流すことで磁界を発生させ、その磁界を使ってマグネットに磁気を着ける方法が一般的です。

発生磁界の形状を決定する「着磁ヨーク」と、巨大な電流を流す「着磁電源」

この2つの機器によって、強力で複雑な磁界を生み出し、様々な着磁を可能としています。