着磁電源の選び方

購入後に失敗したと思わないために

着磁電源のメーカーは日本に数社あり、各社から様々な仕様が発売されていますが、着磁電源の選択を誤ると、着磁が出来なかったり、着磁ヨークの寿命を縮めてしまったり、あるいは不必要なコストをかけてしまう恐れもあります。
特に着磁電源は充電電圧とコンデンサ容量の組み合わせだけで、何十種類もの仕様があります。
それに様々な機能を付加できるので、どれを選んだら良いのかわからなくなりがちです。
着磁電源の寿命は10年~20年と長いため、将来的な利用も考慮して選択することも重要です。
必要最小限の仕様で選択すれば、短期的なコストは安くなりますが、専用機化してしまうことで、その後の利用価値が大きく低下するリスクもあります。
購入後に失敗しないためにも、正しい知識を身につけて間違いのない仕様を選択することをお勧めします。
今回は、着磁電源購入時の「失敗しない選択方法」についてアドバイスさせていただきます。

  1. 最適な基本スペックを選ぶ

    「大は小をかねる」といって、200Vぐらいで着磁できるものに3500V級の着磁電源を購入するのではコストもかかるし、置く場所もとるし、いいことがありません。さらにインピーダンスも上がって、着磁ヨークの負担も増えます。
    やはり、最適な基本スペックを選択することが大切です。
    当社の電源の充電電圧は7種類(1000V・1500V・2000V・2500V・3000V・3500V・4500V)、コンデンサ容量は、200μFから200μF単位で自由に決定することができます。
    ただし、コンデンサ容量が増えるということは、その分コンデンサを積み込むことになりますので、外形寸法、重量が増していくことに注意してください。
    では、いったい何ボルトの電圧で、何μFのコンデンサ容量を選択すれば最適なのか?

     

    ●充電電圧とコンデンサ容量の選び方

    同じ電流が流れる「1000V/4000μF」の条件と、「2000V/1000μF」の条件では、どちらが最適なのでしょうか?
    これは、着磁するマグネット、使用する着磁ヨーク、コスト、使用環境など総合的に判断しないと答えの出ない問題です。
    コンデンサ式着磁電源のメリットは、瞬間的に大電流を流せることにあるのですが、その部分が逆にデメリットでもあります。
    瞬間的に磁界が大きく変化すると、導電体には渦電流が発生し、磁気を通り難くします。
    これはネオジム焼結マグネット等、電気を通しやすいマグネットの場合にはマグネットの中にも渦電流が発生し着磁を妨げます。
    渦電流の影響はパルス電流の周波数が高いほど強くなりますので、出来るだけ、パルス電流の周波数を低くすることが効果的です。
    また厚いマグネットの着磁にはある程度の時間が必要な場合があり、こちらも周波数を低くすることが効果的です。
    着磁電流の周波数はコンデンサ容量を増やすことで低くすることができます。
    よって、着磁の観点から見ると、コンデンサ容量は大きいほど優れています。
    しかし、着磁電流の周波数を低くすることは、すなわち、電流が流れている時間が長くなってしまうため、着磁ヨーク(コイル)の発熱量が大きくなります。
    細い電線を使用している着磁ヨークなどは特に注意が必要で、1回の放電でコイル線が溶けて壊れてしまう危険もあります。
    連続して使用する時などは、蓄熱される量が多いため、放電タクトを長く取らなければならず、生産性は不利になります。
    また、着磁ヨークの寿命と温度は密接な関係があるため、無理に使用すれば寿命に影響を与え、生産のランニングコストにも影響してくるので注意が必要です。
    くわえて、先にお話した「内部インピーダンス」の値は、機種によっても、メーカーによってもバラバラなので、最終的な着磁スペックは実測してみないとわかりません。
    このような理由から基本スペックの選択は、私どものような専門家にまずご相談いただくことが最適と考えられます。
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  2. 余裕を持つこと・将来的な展望を考える

    購入する着磁電源が「今、使用している着磁品専用」というのであれば、コンデンサ容量は固定で、充電電圧も最低限必要な電圧まで充電できるタイプを選ぶのが正しい選択です。
    しかし、多くの場合は着磁品の変更が考えられます。着磁品が変れば、必要な充電電圧・コンデンサ容量が変わってきます。そこで、充電電圧に少し余裕を持っておくこと、コンデンサ容量を切換式にしておくことが大事です。
    また、2出力タイプを選択しておけば、生産数が上がった場合でも生産高を上げることができます。さらに、万が一、片方の出力が故障した場合でもラインを止めることなく作業を続けられるメリットもあります。

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  3. 着磁システムとして考える

    当社の着磁電源には、高速演算処理ができるシーケンサーとカラー液晶タッチパネルが標準で装備されており、着磁システムの中枢を担うことも可能です。
    例えば、自動装置のシリンダー制御やエラー制御、機種の判別から着磁データの記録、外部コンピューターとのリンクも可能です。着磁システムの中枢として、お客様のアイディア次第で着磁電源にできることはどんどん増えていきます。
    その他にも、2種のマグネットを1連で着磁したい場合、2出力の着磁電源を用意し、各ヨークに自動放電することも可能です。
    今まで2台の着磁電源を用意し、それぞれに作業者が着磁作業をおこなっていた生産現場も、1回の操作で完結してしまうので工数の削減ができた例もあります。

アイエムエスの着磁電源は、開発~設計~製造~ソフトウェア制作まですべて自社内で行っております。
そのため、様々なカスタム製作に柔軟にご対応させていただきます。
着磁後の検査等、生産工程を踏まえたご提案も可能ですのでお気軽にお問い合わせください。

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