磁束密度の測定ばらつきの原因|GR&Rと位置決め精度の関係
磁束密度の測定ばらつき、こんな悩みはありませんか?
量産工程で磁束密度や着磁のばらつきを管理されている品質保証・生産技術のご担当者から、よく次のような声を伺います。
「同じワークを測っているのに、測定値が毎回ばらついて安定しない」
「作業者が変わると測定結果が変わってしまう」
「測定システム解析(MSA)でGR&Rの値がなかなか基準に収まらない」
このばらつき、実は製品そのもののばらつきではなく、測定システム側に原因があるケースが少なくありません。本コラムでは、測定ばらつきの正体をGR&R(測定システム解析)の観点から整理し、位置決め精度・角度補正が再現性にどう関わるのかを解説します。
目次
- 測定値のばらつき=製品のばらつき、ではない
- GR&R(測定システム解析)の基本的な考え方
- 磁気測定で測定システムのばらつきが生まれる理由
- 位置決め精度・角度補正が再現性に与える影響
- 量産検査の測定システムを見直すときの着眼点
- まとめ・デモ測定のご案内
測定値のばらつき=製品のばらつき、ではない
ある磁石の磁束密度を測定して「520mT」という値が得られたとき、その数値には2種類のばらつきが混在しています。
- 製品そのもののばらつき:磁石の材料・着磁条件などによる、本当の個体差
- 測定システムのばらつき:測定器・センサ・測定者・測定方法に起因する、見かけ上のばらつき
品質保証で本当に管理したいのは①の製品ばらつきです。ところが②の測定システムのばらつきが大きいと、本来は良品なのに不良と判定したり、逆に不良を見逃したりという誤判定が起こります。「ばらつきが大きい」と感じたとき、その原因が製品なのか測定システムなのかを切り分けることが、量産検査の第一歩になります。
GR&R(測定システム解析)の基本的な考え方
この切り分けに使われるのがMSA(Measurement System Analysis:測定システム解析)であり、その代表的な指標がGR&R(Gage Repeatability & Reproducibility)です。自動車部品の品質マネジメント規格IATF16949では、管理特性の測定システムに対してこうした解析が求められます。
GR&Rは、測定システムのばらつきを2つの成分に分けて評価します。
●繰り返し性(Repeatability):同じ作業者が、同じワークを、同じ機器で繰り返し測ったときのばらつき。測定器そのものの安定性を表します。
●再現性(Reproducibility):作業者や測定条件が変わったときに生じるばらつき。測定方法・人による差を表します。
この2成分が全体のばらつきに占める割合が小さいほど、その測定システムは製品の真のばらつきを正しく捉えられる、と評価されます。逆にこの割合が大きいと、その測定システムは管理特性を評価する能力が不足していると判断されてしまいます。
磁気測定で測定システムのばらつきが生まれる理由
磁気測定は、他の寸法測定などと比べて測定システムのばらつきが生じやすい特性があります。理由は磁界が空間的に大きく変化するためです。
① センサ位置のわずかなズレが値を変える
磁束密度は測定位置によって大きく変化します。センサの位置が毎回わずかにずれるだけで測定値が変わり、これが繰り返し性の悪化として現れます。位置決め機能のない測定器では、このズレを抑えることができません。
② センサの当て方(角度)が作業者で異なる
プローブをワークに対して完全に同じ角度で当てることは、手作業では困難です。作業者ごとの当て方の差が測定値の差となり、これが再現性の悪化につながります。
つまり磁気測定におけるGR&Rの悪化要因の多くは、製品ではなく「測定位置の再現性」と「センサ角度の安定性」という、測定システム側の問題に帰着します。
位置決め精度・角度補正が再現性に与える影響
では、測定システム由来のばらつきを抑えるには何が必要でしょうか。鍵になるのが次の2つの機能です。
① センサ感磁部の位置決め機能
センサの感磁部を毎回同じ位置に正確に合わせられれば、測定位置のズレによるばらつきが抑えられ、繰り返し性が改善します。感磁部は外観から位置が分かりにくいため、自動で位置を検出・補正できる機能が有効です。
② 角度ズレ補正機能
プローブの設置角度のわずかな傾きを自動で検出・補正できれば、作業者によるプローブの当て方の差が吸収され、再現性が改善します。
この2つは、そのままGR&Rの繰り返し性・再現性の改善要因に対応します。「高精度に測れる」という機能は、品質保証の観点では「測定システムのばらつきを抑え、製品の真のばらつきを正しく評価できる」という価値に置き換わります。
※ 実際にGR&Rがどの程度改善するかは、ワーク形状・工程・測定条件によって異なります。導入を検討される際は、実ワークでのデモ測定による確認をおすすめします。
量産検査の測定システムを見直すときの着眼点
磁束密度・着磁ばらつきの量産検査で測定システムを評価・選定する際は、次の点を確認すると、測定システム由来のばらつきを抑えやすくなります。
●測定位置を毎回そろえられる位置決め機能があるか
●プローブの角度ズレを補正できるか
●センサが校正され、トレーサビリティが確保されているか
●測定データを記録・出力でき、SPC等の工程管理に展開できるか
●カタログ精度(単体精度)だけでなく、実使用時の再現性で評価できるか
特に最後の点は重要です。カタログ上の測定精度は均一磁界中での単体精度であり、実際の量産検査でのばらつきは、位置決めや角度といった運用要因の方が支配的になることが多いためです。
まとめ
磁束密度の測定ばらつきが安定しないとき、その原因は製品ではなく測定システム側にあることが少なくありません。GR&R(測定システム解析)の観点では、
- 測定位置のズレ → 繰り返し性の悪化
- センサ角度の差 → 再現性の悪化
が主な要因となります。センサ感磁部の位置決め機能と角度ズレ補正機能は、これらを抑え、製品の真のばらつきを正しく評価する測定システムの実現に寄与します。
IMSのマグネットアナライザーMTX-7Rはこれらの機能を備えています。実際の改善効果は実ワークによって異なりますので、まずはデモ測定にて、貴社のワークでの測定再現性をご確認ください。
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測定値の単位換算は磁束密度・磁界強度 単位換算ツールで行えます。